ゴジマエ~後日読み返してもらいたいささやかなまえがき~

1971年生まれ。京都府出身・在住。コピーライター・プランナー。約15年間、大阪の広告制作会社勤務ののち2012年7月からフリーランスに。キャッチコピー一発から広告全体のプランニング・進行管理、企業の販促企画(企画書作成)まで、会社案内や学校案内・フリーペーパーなどの取材からライティングまで、幅広くやってます。 お仕事の依頼などはfuwa1q71@gmail.comまで。 

秋風が吹きはじめた街で 〜松尾優さんの京都文化博物館でのコンサート〜

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きのう京都文化博物館で開かれた松尾優さんのコンサートに行ってきました。朝からとってもいい天気で、街には夏の終わりを告げる独特のいい風が吹いていて、会場のレトロな洋館と、グランドピアノ音色と、透明感のある彼女の声がとてもマッチする、とにかく晴れやかな祝日にうってつけのコンサートでした。

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小さなカフェでのライブから野外でのフリーライブ、祇園のバーでの弾き語りといろんな形態で彼女のライブは見てきましたが、2016年に始まった今年で3回目になるこの京都文化博物館別館ホールでのコンサートは、やはり特別なものです。小さな子どもからご年配の方まで、お着物を召した女性もTシャツにジーンズの男性も、コアなファンからいろんなつながりで最近知った人まで、じつにさまざまな人たちが大きなホールに集まって、思い思いのスタイルで彼女のピアノと歌に耳を傾けている姿が印象的でした。好みが多様化して細分化している時代にあって、多くのライブ会場で見るのは、そのアーティストのファン独特の決まったファッションやトーン&マナーです。それはそれで居心地の良いことなのかもしれません。なので、こういうタイプのコンサートは最近めずらしいのではないかなと思いました。そしてぼくは、この風景、この空気が、とっても好きなのです。ほんとの自由というのは、こういうものだと思うからです。

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今回のコンサートではハイライトがいくつもあって、まるでミュージカル舞台を見ているような楽しさがあり、とてもバラエティに富んだコンサートで2時間あっという間でした。
「紙吹雪」という曲では先斗町の舞妓さんである秀華乃さんの舞との共演され、これがじつに素晴らしかったです。この舞をフィーチャーしたおふたり共演での「紙吹雪」のミュージックビデオを作ったら海外で人気出るんじゃないかなあ。
また、彼女が京都女子大4年生の時に教育実習で出会った生徒たちに向けて作った曲でサカイ引越センターのCMソングにもなった代表曲「君が大人になって」では、子どもたちの合唱隊とも共演。このコラボレーションもちょっとカーペンターズの「Sing」とかを思い出させる雰囲気で、すごく良かったです。

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それから、松尾優さんは今年の6月にはなんと中国でもデビューされ、北京や上海、天津などを巡るツアーを敢行。その際にはフェイ・ウォンの「我願意」をカバーされたのだそうです。彼女いわくこの曲は中国ツアーの際に現地マネージャーにオススメされ、とても感動したので中国のお客さん向けに披露したということでした。
じつは(たぶん彼女は忘れていたのだと思うのだけれど)たまたま数年前、ぼくがなんとなく優さんの歌は中国で受けそうだなと思って「中国にこんな歌があるよ」とお勧めした歌もこの「我願意」でした。それに(これはあくまで余談ですが)「我願意」という歌は、1990年代のはじめ、ぼくがまだ20代の頃に働いていたパナソニックの工場に天津から来た中国の若きエリート研修生と仲良くなって、一緒に三条の珉珉で餃子とビールを飲みながら歌った歌でもあり、そういう個人的な思い出もある歌でした。あの頃はまだバブル崩壊直後ではあったとはいえ日本の方が経済的にも上で、中国は一所懸命に日本の技術を学んで経済成長を目指していた時代でした。だから、フェイ・ウォンの歌が(しかもまだ北京時代の古い曲が!)いまでも中国の音楽関係者のあいだで好まれていることがすごくうれしかったし、そういう好みのラインが似ているところもぼくが松尾優さんの歌が好きな所以なのかもと思いました。ともかく、松尾優さんの歌の魅力は、どこかそういう「歌謡」の雰囲気を残しているところだと思うし、中国はもともとチャゲ&飛鳥中島みゆきなど、そういう歌謡を感じさせるポップスが人気のお国柄なので、松尾優さんの中国のマーケット進出、けっこう可能性あると思うなあ!

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じつは松尾優さんのことは、彼女がまだ大学生のころに京都学生祭典のライブに出演されていた頃から知っていて、そうした縁もあってENJOY KYOTOで取材させていただいたり、彼女のアルバム「Kiss and Fly」発売の際にはレビューを書かせていただき、歌詞カードにはスペシャルサンクスとしてぼくの名前をクレジットしていただいたりしたこともありました。

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いま流行りのサウンドとはいえないだろうし、時代を変えるようなとんがった過激な歌詞もありません。DJもいませんし、派手なダンスもありません(舞妓さんの舞はありました)。でも逆にいえば時代や年代を超えて愛され続ける音楽であり、世界中の誰もが楽しく聴ける、とても普遍的な音楽なのだと思います。マーケティング戦略やメディア戦略なんかとは無縁の、心から心へ直接届く音楽なのだと、ぼくはそう思います。

変拍子だらけの超絶技巧ピアノ演奏も素晴らしいし、街にふわっと吹いてくる優しい秋風のような歌も本当に美しいです。かつてThe New York Timesではドリス・デイとラッパーのスヌープ・ドギー・ドッグの写真と並べて「ポップスはいかにしてメロディを失ったか?」という記事を出したけれど(あれももう25年前!)、いまどきの音楽はどんどんメロディを失ってサウンド志向になっていくし、それはそれで好きなものもたくさんあるのだけれど、松尾優さんの歌は「ああ歌というのはこういうものだったなあ」と、「みんなが歌える歌というのはいいものだなあ」ということを思い出させてくれます。

www.nytimes.com

直近だと9月28日に下鴨神社 糺ノ森でフリーコンサートがありますので、そちらに足を運んでみるのも良いと思います。涼しくなった秋の京都の森で、手拍子足拍子しながら、思い切り大きな声で歌を歌ってみるのもいいと思うのです。ぜひ。

●彼女の代表曲「君が大人になって」

卒業する子供達へ「君が大人になって」リリックビデオ(2013)/松尾優

●超絶技巧ピアノインストゥルメンタルカフカ

【MV】松尾優「カフカ」

●最新アルバム「ライラックの空に」のなかの個人的お気に入り曲「Love Day」

Love day




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