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ゴジマエ~後日読み返してもらいたいささやかなまえがき~

1971年生まれ。京都府出身・在住。コピーライター・プランナー。約15年間、大阪の広告制作会社勤務ののち2012年7月からフリーランスに。キャッチコピー一発から広告全体のプランニング・進行管理、企業の販促企画(企画書作成)まで、会社案内や学校案内・フリーペーパーなどの取材からライティングまで、幅広くやってます。 お仕事の依頼などはfuwa1q71@gmail.comまで。 

ENJOY KYOTOの2017年お正月号にして記念すべきIssue20について

あけましておめでとうございます。昨年は1月14日にブログで「失敗しよう」と年初の目標を書きました。それはまあ字義通りというよりはむしろ、失敗するようなチャンレンジをしようということだったのですが、結果的にはそれほど大きな失敗はなく、それはつまり思っていたほどには大きなチャレンジに挑むことができなかたということでもありました。
それでも、昨年末のブログ(大晦日に2016年の仕事をまとめてみました。 - ゴジマエ~後日読み返してもらいたいささやかなまえがき~)でも書いたように、大きな仕事ができたことについては自分にとってこの誓いが裏支えになっていたという実感はあります。大きな仕事や著名な方とのお仕事、多様な場で広く公開されるお仕事というのは、ともすれば致命的な悪評につながる場合もあるわけです。アーティストの方々と違い、ふだん無記名で仕事をしているコピーライターはあまりそうしたケースに慣れておらず、ゆえに「役不足ではないか?」と躊躇したり慎重になったりすることが往々にしてあるわけですが、その年初の誓いがあったおかげで、背中を押してくれたというのはあった気がします。引き続き今年も躊躇せずなんでもどんと来い!で、臆することなく取り組もうとは思っています。

さて、今年の目標はなにか?年初にテレビで市川海老蔵さんが「目標なんてないですよ。つねに通過点ですから」とおっしゃっていて、ああ、それは伝統芸能や伝統工芸なんかに携わっている方はみんなそうかもなあと思いました。ENJOY KYOTOで職人さんやお寺や神社の方々などとお話ししていると、やはりもっと大きな時間の中に自分の仕事を置いていて、1000年前と1000年後のあいだにある「いま」というわずかな時間を自分が担っている、という意識で仕事をされているように感じます。今回取り上げたお正月号に登場いただいた方々も、まさにみんなそのような大きな時間の中で仕事されている方ばかりでした。ざっとですが最新号の紙面をご紹介したいと思います。

表紙のおめでたい掛け軸とコンセプトフレーズ。

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ENJOY KYOTOは昨年11月で創刊から3周年を迎え、本年最初の正月号で20号目となりました。その記念すべき年初の号の表紙を飾るのは、巻頭特集でピックアップした表具師・井上雅博さん(京表具井上光雅堂)の最新作(完成直後に撮影した出来たてホヤホヤをお持ちして撮影しました)である「檜のお飾り」。花屋みたてさんの作品(みたて(花屋) - お正月飾り4 檜のお飾り(川合 優)... | Facebook)を掛け軸にしたこの作品は、お軸が立体パネルになっていて真ん中をくり抜き、そこに檜の木と枝、そして水引を施したみたてさんのお飾りを持ってきた斬新な掛け軸です。伝統あるものと新しいアイデアが融合したこの作品は正月らしさだけでなく、ENJOY KYOTOらしさという点でもぴったりの作品でした。そこでコンセプトフレーズとして掲げたのが“Reframe the traditional New Year style”です。「日本の伝統的なお正月をリフレームする」という意味なのですが、実はこのフレーズは僕が英語で書き、ネイティブ監修を担当しているリッチからOKをもらったものです。そして撮影はふだんよりお世話になっている正伝永源院さんのお茶室をお借りしています。撮影の時に偶然、お軸の中央近くに白い光が斜めに差し込んでいるのも、どこか神々しく、シンボリックな印象を与えています。

巻頭特集は表具師の井上雅博さんをピックアップ。

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キャッチフレーズは”Playing the supporting role to perfection”としています。英語にすると長いのですが日本語では「名脇役」という意味です。ぼく自身、井上さんとお話しするまで掛け軸や屏風というとやはり書や絵画など主役である作品のほうに目が行きがちだったのですが、今回取材したことで、たとえば奥さんの実家にある掛け軸をあらためて見て、これもどこかの表具師さんが仕事されたんだろうなあとか思ったりしました(もちろんかなり単純で質はまあ...という感じでしたが)。いずれにしても表具師さんというのはその作品を引き立てるのが仕事です。それでいて、そこにはその作品自身のコンセプトや描かれている絵画のモチーフ、描かれた書の意味などに合った材料や素材を選び、屏風や軸に仕立てるという作家性も求められます。そのあたりがなんというか良い監督の良い映画には必ずいる、演技派で渋い仕事をする名脇役をぼくに連想させるのです。

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考えてみれば海外でも額装とか額に彫刻を施すような仕事はありますが、表具師のような、完全に脇役に徹しながらそれでいてアートに通じる完成と高い技術を必要とする仕事というのは、ちょっと他になかなかないような気がします。そういう意味でもENJOY KYOTOらしいアプローチになったのではないかなと自負しています。井上さんはいま、表具師という唯一無二な技術を活かしてホテルやゲストハウスの室内装飾やインテリアの装飾、空間プロデュースのような仕事もされています。今回の取材でもそうした作品もご紹介しています。

初詣と、お守りについて。

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今年のお正月に奥さんの実家に子供らとともに帰省した際、いわゆる地域の氏神さんと呼ばれる小さな神社にお参りしたのですが、そもそもの初詣というのはこうした地域の氏神様に村の代表者が大晦日の夜からこもってそのまま年越しをして村の一年の安寧を願うものだったそうです。そうした初詣の起源を示しながら、今では宗教行事というよりも一年の誓いを立てたり運勢を占ったりする楽しいイベントになっていると書きました。そこには異教の人々含め外国人の観光客にも気軽に体験してもらいたいと考えてのことです。

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そしてお守りはデザインがかわいいものを集め、そのご利益とあわせて紹介しています。とくに外国人観光客向けということで上賀茂神社の「航空安全」のお守りはぴったりだなと思いました。今回、自分自身でそれぞれの神社に足を運び実際にお守りを購入して掲載することにしました(北野天満宮さんのみデータ支給が規則だということでしたので購入していません)。撮影したいというのもありましたが、やはりお守りというのは神様からの授けものですから、撮影用にお借りするとか無料でご提供いただくとかいうのは、ちょっと違うなあと思ったからです。なんというか、こういうの信仰者ではないのに、ちょっと罰当たりかもと感じたりするあたりも、もしかしたらちょっと独特な感覚なのかもしれませんね。

「縁起物」という日本的な慣習。

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お正月の縁起のいい食べ物を、ということで老松さん(京都の和菓子 老松)の花びら餅と、丸久小山園さん(京都・西洞院店 | 茶房「元庵」 | 宇治 丸久小山園)の大福茶を取り上げました。海外ではたとえば「縁起のいい食べ物」という発想そのものが基本的にないということです。考えてみればそうですよね。おせちなんかもそうですが、食べることや食材に意味を込めて、その意味に照らして食事をいただくというのは、日本人独特の思想なのかもしれません。「牛は神様の使いだから食べない」とか「まじないとして何かの薬草を食べる」みたいなのはありますけどね。ぼくもお正月に自分の実家に行くときに老松さんの花びら餅と丸久小山園さんの大福茶を買って行って家族でいただきました。

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あと老松さんに伺った時に花びら餅を作っているところを見せていただいたので、その様子を見ながら「ああ、これイラストで再現してもいいかも」と思いたち、実際に掲載してみました。大福茶の入れ方もそうですが、きっと完成形だけをみても、外国人のかたにはこれがどういうもので、どうなってできてるのか、わからないだろうと思ったからです。イラストはマムマムのぶりんさん(https://www.facebook.com/mammamnon/?pnref=lhc)に描いてもらいました。いつも可愛いイラストで紙面に華を添えてくれています。

子どもとお正月の遊びについて。

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この京こまは木ではなく布でできています。木の芯に布を何重にも巻きつけていくんです。神泉苑の向かいにある雀休さん(雀休 | 京の逸品 老舗モール)の中村さんはいまや京こまを作ることができる最後の職人さんなのです。で、実際にうちの息子たちにコマ回しをやらせてみたのですが、最初はこれがからきしダメで全く回らないんです(笑)。ところがそんな現代っ子でもですよ、回らないとなると回そうと頑張っていくんです。そしてだんだんとコツを掴んで、みるみる上手に回せるようになったんですね。なんというかこういう手先指先の感覚を使ってその力加減を感覚で調節しながら遊びを習得していく、というのは自分の記憶を振り返っても、やはりすごく大事なことなんじゃないかなと思いました。今だとなんでもボタンです。音楽を聴くのも、お茶を入れるのも、遊ぶのも、何から何まで、ボタンを押すくらいしか動作がないんですよね。これだとダメだなあとね、なんとなく感じました。

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凧と羽子板については、船はし屋さん(なつかしい京の駄菓子屋船はし屋)を取材。寺町四条を下がったところにある京都の人ならなんとなく知ってるはずの駄菓子屋さん。ここのご主人がとても面白い方で、絵を描いたり文章を描いたり多彩な方でした。店の中は懐かしいお菓子ばかりで、取材を終えた後は単純にお客としてお菓子をいっぱい買い込んでしまいました。

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というわけで、2017年最初の号はお正月の楽しさを新しく見直してみました。季節のお菓子をいただいたり、子供のことで神社にお参りしたり、床の間に時期時期のお軸をかけたり、花を飾ってみたり。そうした、当たり前のことを当たり前に、毎年毎年繰り返すことの豊かさについて、歳を重ねてみた初めてわかるようになってきたところがあります。そんなことを考えながら一年を始めたいと思います。で、今年は「実行」の年、とします。いままで考えてきたことを実行に移し、来年以降に華を咲かせるための準備になると考えています。いままで以上にいろんな人にお会いする一年になるだろうと思います。会いたいよー、と思ったらできるだけすぐに会いに行くようにします。話したいよー、と思ったらなるべく早くお話しに伺います。よかったら、笑顔で迎えてやってください。そしてよかったら、みなさんからも「会いたいよー」って言ってくれると喜びます。ちぎれるくらいに尻尾を振って会いにいくので、ぜひぜひよろしくお願いします!