ゴジマエ~後日読み返してもらいたいささやかなまえがき~

1971年生まれ。京都府出身・在住。コピーライター・プランナー。約15年間、大阪の広告制作会社勤務ののち2012年7月からフリーランスに。キャッチコピー一発から広告全体のプランニング・進行管理、企業の販促企画(企画書作成)まで、会社案内や学校案内・フリーペーパーなどの取材からライティングまで、幅広くやってます。 お仕事の依頼などはfuwa1q71@gmail.comまで。 

宝ヶ池球技場へ京都府高校ラグビーの決勝「伏見工・工学院vs京都成章」を観に行ってきました。

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今日は宝ヶ池球技場に高校ラグビー京都府予選決勝を観に行って来ました。ラグビーの試合を生で見るのは本当に久しぶりでした。じつは高校2年生の春に一度だけここで試合をしたことがあります。ぼくは何も考えずにメインスタンドの空いている席に座ったのですが、たまたま伏見工・工学院のOBや選手のご父兄が周りにたくさんいらっしゃる場所だったので、伏見工・工学院の応援目線で試合を観ることにしました。

スタンドでは山口良治先生や大八木淳史さんの姿も見られました。もともとあのスクールウォーズで有名になった伏見工の名前が、再来年には完全になくなること、またOBの平尾誠二さんが今年亡くなったこともあったので、伏見工・工学院を応援しようと思っていたのですが、なんとなくそういう人は多いのかなとも思い、それはそれで京都成章の選手たちには気の毒というか、だからこそ、そういう大人の勝手な判官贔屓みたいのには負けずに、頑張ってほしいなあという思いも同時にあったのですけどね。

驚いたのは野球の応援みたいに部員たちが大声で応援歌というか、サッカーでいうチャントみたいなのをずっと叫んでいることでした。ぼくの時代にはあんなのなかったなあ。まあなんだか高校の体育祭みたいな雰囲気で和やかで楽しくはあるのだけど、ラグビーファンとしては選手の声や身体のぶつかる音もラグビー観戦の醍醐味なので、もう少し静かに見たかったなと思いました。

試合は一進一退の攻防でどちらに転んでもおかしくない、とてもいい試合でしたが、モールやラックなどフォワードの接点のところで京都成章がことごとく優位に立ち、伏見工・工学院はたびたびボールロストをしてしまったことが勝負を分けた印象でした。最終的には20-17で京都成章が勝ちました。伏見工・工学院は後半ロスタイムにワントライを返して最後に意地を見せてくれました。

久しぶりに高校生のラグビーを自分も高校時代にプレイしたことのある宝ヶ池球技場で見て、そして敗れて泣きじゃくる大男たちの姿を見て、素直に感動しました。じつはすでに伏見工としての募集を終えていて1年生は工学院の生徒となり、3年生がチームを去るとここにいる2年生が最後の伏工ラガーメンとなるのだそうです。それだけに強い思いがあったのだろうと思います。スタンドからも「2年生!あと一年あるぞ!来年頑張れよ!」という声がかかってました。

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そして、ラグビーがいいなあと思うのは、最後に相手校の応援席の前に互いの選手が来て挨拶していくところなんです。そしてその挨拶に自分のチーム以上の大きな拍手を互いにするところです。本当にノーサイドなんです。

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かつてユーミンが歌っていました。

なにをゴールに決めて、なにを犠牲にしたの?
誰も知らず。
歓声よりも長く、興奮よりも速く、
走ろうとしていたあなたを少しでも、
わかりたいから。
人々がみんな、あなたを忘れても、ここにいるわ。

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ぼくも、秋の終わりの夕暮れのラグビー場だけにある美しさを目に焼き付けようと、遠く歓喜の声を上げる京都成章の選手たちと、その手前で涙にくれる伏見工・工学院の選手たちの、時を追うごとに長くなる選手たちの影を、そのふたつの感情のコントラストの残酷さを、いつまでもいつまでも見ていました。そこで、ふと気づいたことがありました。「ああ、オレあんな風に悔しがったこともう何年もないなあ」ということです。

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青春の時代には、そうたとえば恋にしてもそうですし、いろいろと叶わないことがたくさんあります。そして叶わない理由はたいていが理不尽で、努力とかプランニングとかマーケティングとかそういうこととは一切関係なく、ただ相手の女の子が自分を好きではないというただ一点それだけで、それらの夢やすべての努力は無残に敗れ去ります。しかし、大人になるとそういう理不尽な経験はだんだんとなくなっていきます。努力やプランニングやマーケティングによって、人は大きな失敗をしないよう入念に準備し、そして報われるような根回しやら大人の事情やらで、うまう立ち回ろうとします。失敗しても反省会議を開いてあすこがこうダメだったからだという言い訳をします。そして周囲や上司やそして何より自分を納得させるようにします。

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でもそんなのみんなウソだよなあ。伏見工・工学院の選手たちのあの態度が全てだよなあ、と。べつに勝った京都成章がより多くの準備と努力をしたわけでもないと思うんです。伏見工・工学院だってきっと負けないくらいの準備と作戦会議とをやってきたはず。でも勝つのはただ1校だけ。そこにはほとんど理由や根拠と呼べるものなんてない。でもだから悔しいんだと思うのです。だからこそ彼らあんなになって悔しがるんだろうと思うんです。「なんで?」とね。
「なんで?」と問うようなことは、ぼくはもう随分と経験していないような気がします。大人だから、たいていのことはちゃんと準備するし、ダメでもダメな理由がぜんぶキレイに説明できます。「なんで?」などと終わってから問うているようでは初めから準備ができていないんだと納得することもできます。それにそもそも失敗したらすべてを失うような取り組みかたは、むしろできませんしね。

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でも本当はそうじゃないんじゃないかなあ、とね。人目を憚らず泣きじゃくりながら全力で悔しがっている伏見工・工学院の選手たちを見て、ふとそう思いました。いいもの観たなあと。一人でふらっと行ったんですけど、誰かと一緒に行けばよかったと思いました。「ねえ、あれ、すごくよかったよねえ」としみじみ話しながら、ズンズン北山通を歩きたかったなあと。ゲームと秋の夕暮れの球技場の余韻に浸りつつ、そんなことを思いながら歩いていると、気づけば宝ヶ池から北大路まで歩いていました。もうそろそろ京都市内も紅葉の見頃が近づいています。紅葉が終わって、観光客の波が引いたら、冬はもうすぐそこです。

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