ゴジマエ~後日読み返してもらいたいささやかなまえがき~

1971年生まれ。京都府出身・在住。コピーライター・プランナー。約15年間、大阪の広告制作会社勤務ののち2012年7月からフリーランスに。キャッチコピー一発から広告全体のプランニング・進行管理、企業の販促企画(企画書作成)まで、会社案内や学校案内・フリーペーパーなどの取材からライティングまで、幅広くやってます。 お仕事の依頼などはfuwa1q71@gmail.comまで。 

今年も京都ヒストリカ国際映画祭がおもしろそう。

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いよいよ明日11月2日より、今年で8回目を迎えた京都ヒストリカ国際映画祭が京都文化博物館で開催されます。京都ヒストリカ国際映画祭というのは、世界中の歴史劇・時代物の映画を集めた映画祭で、まあこんなコンセプトでやっている映画祭は世界広しといえどもこの映画祭くらいしかまず見当たらないだろうと思います。そしてそれは、かつて時代劇華やかりしころに「東洋のハリウッド:と呼ばれた京都だからこそ意味のあることなんだと思うんです。

京都ヒストリカ国際映画祭とENJOY KYOTOの関係でいえば、一昨年にかなり深掘りしたインタビューをさせていただき、そうした京都と時代劇と観光の可能性についてのお話を、東映の高橋剣さんや京都ヒストリカ国際映画祭実行委員の衣川くるみさんと一緒にさせていただきました。
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時代劇映画制作のためのワークショップ「フィルムメイカーズ・ラボ」に世界中からクリエイターが集まってきている話や、時代劇とVRなどの先端映像技術の融合とか、いまあらためて読んでみてもENJOY KYOTOで自分がやろうと思っていることや、その後の京都の時代劇をめぐるある種のクローズアップのされかたなんかを先取りした内容になっているんじゃないかなと思っています。よかったら読んでみてください。↓
enjoy-kyoto.net

なかでも特筆すべきはこのインタビューの第10回特別編として、高橋剣さんや衣川くるみさんのご好意で、パトリス・ルコントのインタビューをさせていただいてます。いやあルコントはぼくにとっては青春というか、あのパルコ文化華々しい90年代初頭に「髪結いの亭主」「仕立て屋の恋」などを観て好きな監督さんだったので光栄でした。たぶんいまのところぼくが直接インタビューさせていただいた方の中で、もっとも世界で名前の知られた方であり、もっともVIPな人だったと思います。でもパトリス・ルコント監督はとても気さくな方で、大勢の取り巻きに囲まれたりすることもなければ、取材に関してのNGなどもなく、まゆまろとの記念撮影に応じたり、冗談を言ったり、とにかく和やかでフレンドリーな空気の中で取材は進行しました。
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続いて昨年の京都ヒストリカ国際映画祭では「大河の抱擁」というコロンビアの映画が来ていたのでそれを観に行きました。この作品はちょうどたまたまガルシアマルケスの本を読んでいたこともあって個人的にすごくよかったです。じつはこの作品はこの映画祭での上映後にアメリカのアカデミー賞で外国語映画部門にノミネートされ、次いで「彷徨える河」と改題されて日本でもロードショウ公開されるなど、京都ヒストリカ国際映画祭の先見の明が浮き彫りにした作品だったともいえます。またENJOY KYOTOで紹介したこともあってか「今年は外国人のお客さんが例年よりたくさん来場されています!」と衣川くるみさんからもおっしゃっていただきました。その辺りのことは去年このブログにも書きました。
naoyamatsushima.hatenablog.com


さて、いよいよ今年です。まずこれは記者発表での様子。2年前にインタビューした東映の高橋剣さんによるご挨拶。しかしお名前が「東映のケンさん」にして「剣」ですよ。もう時代劇を扱うことを宿命づけられたとしか思えないですよね。
ナビゲーターはアジア映画にものすごくお詳しい飯星景子さん。さすがに香港やインドの映画の紹介になると、その情報量と熱量が尋常じゃなかったですね。いやはや、さすがの解説でした。
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さて、話題的にはもちろん「The Homesman」が期待大なんです。この作品は、トミー・リー・ジョーンズが主演・監督も務める西部劇。といってもガンマンが活躍するアクション映画ではなく、アメリカ開拓時代を舞台に奇妙な旅を続ける人たちの運命を描いたロードムービー。なんといってもあのトミー・リージョーンズが映画祭に来場して、トークショー形式なのかインタビューなのかはともかく、作品についてみんなの前で語ってくれるということです。文博のシアターってのは結構コンパクトなので、かなり間近でハリウッドスターを見るチャンスです。さすがに今回はインタビューとかできないかなあ。できないよなあ。
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マスコミ的にはトミー・リー・ジョーンズの来場もあって「The Homesman」に話題が集中しがちなのですが、他にも今回けっこう好みな作品が多いんです。例えばこの「Baahubali –The Biginning」
この作品は映画祭のオープニングムービーとなっているインド映画。インド映画というといわゆる歌って踊ってというイメージがありますが、この作品はとても重厚で骨太な歴史大河作品。出生の秘密を知るために自分が赤ん坊の頃に拾われたという滝の上に行くと、そこで一人の女性兵士と恋をする。戦争中だった彼女の王国に兵士として助太刀するが、その敵国で自身の出生に関わる大きな秘密を知るという、まるで神話のような物語。超大作にふさわしいスペクタクルな映像が圧巻。
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「バタリオン」。
ロシアの映画で第一次世界大戦に結成された女性部隊を描いた物語。降着が続く前線で戦意を失い式の下がった男性兵士に対し、この「婦人決死隊」と名付けられた女性部隊の勇敢な振る舞いとその先に待つ過酷な運命を描いた作品。ヨーロッパらしい色調が美しい。
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「ウルスリのスズ」
アルプスの山奥で暮らす少年・ウルスリの冒険とその家族や友人との日常を描いた作品で、スイスでは名作絵本と言われる作品の映画化。ベルギーの「ブルーベリーヒル」とか、フランスの「みつばちのささやき」「マルセルのお城」といったあたりのヨーロッパの良質な少年映画の流れの作品かな。久しくこのタイプの映画を見ていなかったので楽しみです。
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「秘密が見える少女」
デンマークノルウェイチェコの合作映画。相手の目を見るとその人が恥だと思っていることが見えるという特殊能力を持ってしまった少女の物語。個人的にはもしかしたら案外これが一番いいんじゃないかと期待している作品。
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他にも今回は「ニンジャ映画進化論」と題して、1921年に尾上松之助主演で製作され、今回活動弁士付き上映の「豪傑児雷也」から、お色気たっぷり「くノ一忍法」、アニメ作品の「THE LAST NARUTO THE MOVIE」に「ミュータント・タートルズ」にいたるまで、あらゆるタイプのニンジャ映画を集めた上映も見どころ。これはねえ、全作通しで時系列で見たいなあというラインナップです。個人的には弁士つき上映の「「豪傑児雷也」と中島貞夫監督のデビュー作「くノ一忍法」が見たいかな。
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それに今回は歴史劇だけを扱うはずの京都ヒストリカ映画祭で初めて「わたしが棄てたナポレオン」「古都」というふたつの現代劇作品が上映されます。これは先にも触れた「フィルムメイカーズラボ」出身の監督が制作した作品で、いわば「凱旋上映」とでもいうことになるでしょうか。「カムバックサーモンプロジェクト」と名付けられております(笑)。

「わたしが棄てたナポレオン」はジョルジア・ファリーナ監督の作品でイタリア映画。イタリア映画というとビスコンティとかフェリーニとかパゾリーにとか重厚な芸術作品をイメージしがちだけど、ぼくはそうした作品も好きだけどイタリアのエンタメ映画はけっこう好きなんです。イタリアのエンタメ映画って「イタリア的恋愛マニュアル」とか「昼下がり、ローマの恋」とか、とにかく笑いあり涙あり、人生を謳歌しながらどこかうまくいかなくて、でも兄弟とか友人とか家族がいつも助けてくれてみたいな、人情モノというか日本のドラマやエンタメ映画に感覚が近いと思うんです。この作品もトレイラーを見てる限りテンポ良くて楽しめそうですね。
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「古都」は京都を舞台にした川端康成の小説を現代に翻案した作品。川端の小説はすごく好きな作品だったので、これを現代版にどう描くのかってのは、わりと楽しみです。監督はYuki Saito。出演は松雪泰子さん、成海璃子さん、橋本愛さん、奥田瑛二さんなどです。
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またこの映画祭の楽しいところは、映画上映後にその作品の監督や出演者など関係者によるトークショーがセットで行われること。今回もトミー・リー・ジョーンズだけでなく、昨年ぼくもENJOY KYOTOで取材(参照→
時代劇にまつわる随想 - ゴジマエ~後日読み返してもらいたいささやかなまえがき~
)させていただいた斬られ役でお馴染みの福本清三さんと殺陣師の菅原俊夫さんなどもゲストで登場されるそうです。

どの国にも歴史はあり、そして、どの国にも映画がある。先のインタビューでも話していたことなのですが、歴史映画を集めた国際映画祭というのは、ある意味では互いの国の歴史・文化・伝統を「楽しく」理解し合い、そしてリスペクトしあうのに、すごくいい機会なのではないかなとぼくは思います。歴史を語り合うとややこしい部分があったり、堅苦しい話になったりもしがちですが、歴史映画ならもっと肩肘張らずに気軽に語り合えると思うし、そこから互いをわかりあうことの第一歩になるんじゃないか。そんな試みにもこの映画祭はなるような、そんな気がしています。


京都ヒストリカ国際映画祭
●期間:2016年11月2日(水)〜11月13日(日)
●場所:京都文化博物館
www.historica-kyoto.com