まどみちおさんのことば
子どもといるといわゆる童謡やわらべ歌のようなものと再会する機会があり、そのあまりにシンプルで耳慣れたフレーズや歌詞にまったく気づかなかったけど、これまで何気なく口ずさんでたメロディーがすごいポップな音楽だったんだなあと感心したり、ふといままであまり考えてこなかった歌詞について考えたりすることがあります。その典型がまどみちおさん。このドロップスの歌は素晴らしい歌詞とポップなメロディーに、ああこんないい曲だったんだと再発見したし、誰もが知ってる「ぞうさん」の歌詞の本当の意味には深い感銘を受けました。
ぞうさん
以下、まどみちおさんご自身の解説です。
ぞうの子は、鼻が長いねと悪口を言われた時に、しょげたり腹を立てたりする代わりに、一番好きな母さんも長いのよと、誇りを持って答えた。それは、ぞうがぞうとして生かされていることが、すばらしいと思っているからです。だからこの歌は、ぞうに生まれてうれしいぞうの歌、と思われたがっているでしょう。目の色が違うから、肌の色が違うから、すばらしい。違うから、仲良くしようということです。
誰もが知ってる「ぞうさん」。この歌詞は「お鼻が長い」と揶揄された子どもの象が「母さんも長い」と誇りをもって答え、二番の歌詞でその「母さんが一番好きなのよ」と語ることで、自らの出自や特性など母から受け継いだものを愛していると宣言している歌だったんです。それをこのシンプルな言葉で!物書きのお手本のような詩ですね。「やぎさんゆうびん」とか「ふしぎなポケット」とか、共通してシンプルな言葉の繰り返しなのに、世界は閉じないで広がっていく。ほんとうにすごいです。プロの仕事だなあという感じ。なにより現在104歳でいまだご存命だということがすごい!
不思議なポケット