ゴジマエ~後日読み返してもらいたいささやかなまえがき~

1971年生まれ。京都府出身・在住。コピーライター・プランナー。約15年間、大阪の広告制作会社勤務ののち2012年7月からフリーランスに。キャッチコピー一発から広告全体のプランニング・進行管理、企業の販促企画(企画書作成)まで、会社案内や学校案内・フリーペーパーなどの取材からライティングまで、幅広くやってます。 お仕事の依頼などはfuwa1q71@gmail.comまで。 

トークイベントに子連れで参加してみました

15日の金曜日の夜。カンバラクニエさんが雑誌「H」に連載されてきたものを一冊にまとめた本「すりばち眼鏡」の出版を記念したトークイベントに、奥さんと息子の3人で参加してきました。といっても「会場レポート」と題してイベントの雰囲気を詳細に伝えられるほど写真を撮ったわけでもなく、いわゆるスタッフブログみたく「裏側こっそり教えちゃいます」みたいな裏話もとくにありません。ふつうに「メチャよかったよー♪」みたいなameblo風の感想書いてもべつにそれオレが書いて読む人おもしろいんか?みたいなこともあって。

そこでこのブログではお題のとおり「トークイベントに子連れで行くことは非常識なのか?」という命題について書いてみたいと思います。結果として今回のイベントでは息子は終始おとなしくしていてくれたし、その結果のいかんにかかわらずそもそも個人的結論を言ってしまうと「まあべつにええやんかいさ」、以上。ということなんですけれども、それだとまあどうにもならんので、もすこし辛気臭く、うじうじうじうじ書いてみたいと思います。

もともとウチの息子は行儀がいいのか内弁慶なのかその両方なのか、電車とかバスとかそうゆうパブリックスペースで走り回ったりギャアギャアと泣き叫んだり、そうゆうことをほとんどしない子どもなので「まあまあだいじょぶやろ」みたいな自信はなくはなかったわけです。ただトークイベントというのは文字通りトークだけなのですね。ひとりかふたりか、立ってか座ってかはともかく、出演者が出てきてしゃべるだけ。あたりまえです。だからトークイベントと銘打たれているわけです。

しかし子どもというのはたいてい、動くものか歌か音楽か動物みたいなキャラクターがいるかしないと、まあだいたいものの5分で飽きてきます。椅子から降りると言い出します。降りるとまあ走り出します。走ったらまずモノを倒します。壊します。そこで「静かにしなさい」と言います。すると怒るか泣くかわめくかその全部かをして、よけい迷惑がかかるという、まるで日本経済を襲うデフレスパイラルみたいに負のスパイラルに委細構わず突っ込んでいきます。もうこうなるとお母さんは子どもといっしょにその場から(ほぼ自主的に)強制退去を余儀なくされてしまいます。結果ほとんどのお母さんは次から「ええ、もう二度と行きませんとも」となてしまいます。これではあまりにさびしいし、もったいないことだとぼくは思うのです。

今回はイベント参加にあたりメールで予約する際に「3歳の子連れでの参加は可能ですか?」とあらかじめ問い合わせていました。すると快く「まったくかまいません」という趣旨の返信をいただきましたし、会場のCafe Marbleさんも子ども用のイスをご用意していただきました。それから当日おなじテーブルで相席になった方もいやな顔ひとつせず快く迎えてくださって(正直トークイベントで相席が子連れだと「え、マジ?ガキ?おいおい静かにしてんだろな?」って思うよねふつう)、ほんとうに今回は環境が幸運だったのもあると思うのです。それからカフェでのイベントだったことでタルトがついてたり、さらにはそのタルトにカンバラさんお手製の旗が立ててあったり、偶然にも息子の気を引くものが少なからずあったりして、そういう幸運が重なったこともよかったのはよかったんだろうなあとは思います。

じつは今回のイベントはそもそも(ぼくがはじめから平日なので参加できない予定だったので)奥さんにせっかくだから行って来たら?ということで予約したのでした。うちの奥さんもデザイナーですしやはり興味はあるんですね。でもこういうイベントに行くとなると基本的に子どもとセットになります。美術館も映画館もやはりたいていのお母さんが躊躇されると思います。子どもを預けられるときはいいですけどね、毎回毎回というわけにもなかなかいかないですし、まあなので今回は思い切って「行ってみ」と背中を押してみたのでした。そろそろいいやん、と。結果的には当日仕事のスケジュールの関係で、急きょぼくも参加できることになったので(前日にもかかわらず人数追加を快く受け入れていただきスタッフの方には重ねて感謝です!)それで家族3人での参加になったのでした。

もちろんだからといって、どんなイベントでもところ構わず子連れでさんかしてもいいとは思いません。クラシックのコンサートや美術館や映画館、それから演劇などでも、ちょっと遠慮したほうがいいよね、っていうケースもやはり確実にあるわけです。それから仮に参加はしてもいつもいつも今回のようにうまくいくとは限りません。いざ「ぎゃっ!」ってなったときにどうするか?ってのはきちんと考えて臨むべきだし、状況次第では途中で退席するということもあらかじめ覚悟しなければならないだろうと思います。

でもそれでもぼくは、今回参加してよかったと思いますし、まあたまたま今回は息子がかしこくしてくれてたのですが、それにはウチの子がただがんばっただけではもちろんなくて、やはり先にも書いたように運営スタッフさんの心配りや参加者さん含めたイベント会場全体の「ウェルカム」なやさしい雰囲気があってのことだったとやはり思うのですよね。

そうやって世の中をふと眺めてみると、電車やバスやお店やなんかで、とってもとっても気を遣って申し訳なさそうに肩身狭そうにしているお母さん方をよく見かけるんですね(もちろんそのまったく逆に、もうちょっとなんとかしたらいいのになあ、と思うお母さんもいらっしゃるにはいらっしゃいますが)。あれ見ると心苦しいんですよ、すごく。もっと気ぃ楽にしたらええのになあって、それでもうちょっと子連れのお母さんが、世の中で羽伸ばせるような寛容さというかそういう空気が、まあもうちょっとだけでいいので、あってもいいのになーと思ったりします。「子連れ」というと子どものほうばっかりに目が行きがちですけど、じつはそこには必ずお母さんがセットでいるし、お母さんの(仕事以外の面でも)社会参加、イベント参加って、じつはあんまりきちんと論じられてないような気もしたりするのです。

カンバラクニエさんご本人が、もともととってもやわらかーい空気の人で、しかも春にお母さんにならはったばっかりだったこともあり、今回のイベントは「すりばち眼鏡」という素敵な本がこの世に誕生したことのお話でありながら、ぼくはなんとなくそんなことを、もそもそと考えたりしながら、雨の中「ちち、だっこー」と眠くてぐずりはじめた息子を抱いて傘さして、汗をかきかき、てくてくてくてく歩いて帰ったのでありました。