ゴジマエ~後日読み返してもらいたいささやかなまえがき~

1971年生まれ。京都府出身・在住。コピーライター・プランナー。約15年間、大阪の広告制作会社勤務ののち2012年7月からフリーランスに。キャッチコピー一発から広告全体のプランニング・進行管理、企業の販促企画(企画書作成)まで、会社案内や学校案内・フリーペーパーなどの取材からライティングまで、幅広くやってます。 お仕事の依頼などはfuwa1q71@gmail.comまで。 

ENJOY KYOTOの2017年お正月号にして記念すべきIssue20について

あけましておめでとうございます。昨年は1月14日にブログで「失敗しよう」と年初の目標を書きました。それはまあ字義通りというよりはむしろ、失敗するようなチャンレンジをしようということだったのですが、結果的にはそれほど大きな失敗はなく、それはつまり思っていたほどには大きなチャレンジに挑むことができなかたということでもありました。
それでも、昨年末のブログ(大晦日に2016年の仕事をまとめてみました。 - ゴジマエ~後日読み返してもらいたいささやかなまえがき~)でも書いたように、大きな仕事ができたことについては自分にとってこの誓いが裏支えになっていたという実感はあります。大きな仕事や著名な方とのお仕事、多様な場で広く公開されるお仕事というのは、ともすれば致命的な悪評につながる場合もあるわけです。アーティストの方々と違い、ふだん無記名で仕事をしているコピーライターはあまりそうしたケースに慣れておらず、ゆえに「役不足ではないか?」と躊躇したり慎重になったりすることが往々にしてあるわけですが、その年初の誓いがあったおかげで、背中を押してくれたというのはあった気がします。引き続き今年も躊躇せずなんでもどんと来い!で、臆することなく取り組もうとは思っています。

さて、今年の目標はなにか?年初にテレビで市川海老蔵さんが「目標なんてないですよ。つねに通過点ですから」とおっしゃっていて、ああ、それは伝統芸能や伝統工芸なんかに携わっている方はみんなそうかもなあと思いました。ENJOY KYOTOで職人さんやお寺や神社の方々などとお話ししていると、やはりもっと大きな時間の中に自分の仕事を置いていて、1000年前と1000年後のあいだにある「いま」というわずかな時間を自分が担っている、という意識で仕事をされているように感じます。今回取り上げたお正月号に登場いただいた方々も、まさにみんなそのような大きな時間の中で仕事されている方ばかりでした。ざっとですが最新号の紙面をご紹介したいと思います。

表紙のおめでたい掛け軸とコンセプトフレーズ。

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ENJOY KYOTOは昨年11月で創刊から3周年を迎え、本年最初の正月号で20号目となりました。その記念すべき年初の号の表紙を飾るのは、巻頭特集でピックアップした表具師・井上雅博さん(京表具井上光雅堂)の最新作(完成直後に撮影した出来たてホヤホヤをお持ちして撮影しました)である「檜のお飾り」。花屋みたてさんの作品(みたて(花屋) - お正月飾り4 檜のお飾り(川合 優)... | Facebook)を掛け軸にしたこの作品は、お軸が立体パネルになっていて真ん中をくり抜き、そこに檜の木と枝、そして水引を施したみたてさんのお飾りを持ってきた斬新な掛け軸です。伝統あるものと新しいアイデアが融合したこの作品は正月らしさだけでなく、ENJOY KYOTOらしさという点でもぴったりの作品でした。そこでコンセプトフレーズとして掲げたのが“Reframe the traditional New Year style”です。「日本の伝統的なお正月をリフレームする」という意味なのですが、実はこのフレーズは僕が英語で書き、ネイティブ監修を担当しているリッチからOKをもらったものです。そして撮影はふだんよりお世話になっている正伝永源院さんのお茶室をお借りしています。撮影の時に偶然、お軸の中央近くに白い光が斜めに差し込んでいるのも、どこか神々しく、シンボリックな印象を与えています。

巻頭特集は表具師の井上雅博さんをピックアップ。

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キャッチフレーズは”Playing the supporting role to perfection”としています。英語にすると長いのですが日本語では「名脇役」という意味です。ぼく自身、井上さんとお話しするまで掛け軸や屏風というとやはり書や絵画など主役である作品のほうに目が行きがちだったのですが、今回取材したことで、たとえば奥さんの実家にある掛け軸をあらためて見て、これもどこかの表具師さんが仕事されたんだろうなあとか思ったりしました(もちろんかなり単純で質はまあ...という感じでしたが)。いずれにしても表具師さんというのはその作品を引き立てるのが仕事です。それでいて、そこにはその作品自身のコンセプトや描かれている絵画のモチーフ、描かれた書の意味などに合った材料や素材を選び、屏風や軸に仕立てるという作家性も求められます。そのあたりがなんというか良い監督の良い映画には必ずいる、演技派で渋い仕事をする名脇役をぼくに連想させるのです。

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考えてみれば海外でも額装とか額に彫刻を施すような仕事はありますが、表具師のような、完全に脇役に徹しながらそれでいてアートに通じる完成と高い技術を必要とする仕事というのは、ちょっと他になかなかないような気がします。そういう意味でもENJOY KYOTOらしいアプローチになったのではないかなと自負しています。井上さんはいま、表具師という唯一無二な技術を活かしてホテルやゲストハウスの室内装飾やインテリアの装飾、空間プロデュースのような仕事もされています。今回の取材でもそうした作品もご紹介しています。

初詣と、お守りについて。

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今年のお正月に奥さんの実家に子供らとともに帰省した際、いわゆる地域の氏神さんと呼ばれる小さな神社にお参りしたのですが、そもそもの初詣というのはこうした地域の氏神様に村の代表者が大晦日の夜からこもってそのまま年越しをして村の一年の安寧を願うものだったそうです。そうした初詣の起源を示しながら、今では宗教行事というよりも一年の誓いを立てたり運勢を占ったりする楽しいイベントになっていると書きました。そこには異教の人々含め外国人の観光客にも気軽に体験してもらいたいと考えてのことです。

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そしてお守りはデザインがかわいいものを集め、そのご利益とあわせて紹介しています。とくに外国人観光客向けということで上賀茂神社の「航空安全」のお守りはぴったりだなと思いました。今回、自分自身でそれぞれの神社に足を運び実際にお守りを購入して掲載することにしました(北野天満宮さんのみデータ支給が規則だということでしたので購入していません)。撮影したいというのもありましたが、やはりお守りというのは神様からの授けものですから、撮影用にお借りするとか無料でご提供いただくとかいうのは、ちょっと違うなあと思ったからです。なんというか、こういうの信仰者ではないのに、ちょっと罰当たりかもと感じたりするあたりも、もしかしたらちょっと独特な感覚なのかもしれませんね。

「縁起物」という日本的な慣習。

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お正月の縁起のいい食べ物を、ということで老松さん(京都の和菓子 老松)の花びら餅と、丸久小山園さん(京都・西洞院店 | 茶房「元庵」 | 宇治 丸久小山園)の大福茶を取り上げました。海外ではたとえば「縁起のいい食べ物」という発想そのものが基本的にないということです。考えてみればそうですよね。おせちなんかもそうですが、食べることや食材に意味を込めて、その意味に照らして食事をいただくというのは、日本人独特の思想なのかもしれません。「牛は神様の使いだから食べない」とか「まじないとして何かの薬草を食べる」みたいなのはありますけどね。ぼくもお正月に自分の実家に行くときに老松さんの花びら餅と丸久小山園さんの大福茶を買って行って家族でいただきました。

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あと老松さんに伺った時に花びら餅を作っているところを見せていただいたので、その様子を見ながら「ああ、これイラストで再現してもいいかも」と思いたち、実際に掲載してみました。大福茶の入れ方もそうですが、きっと完成形だけをみても、外国人のかたにはこれがどういうもので、どうなってできてるのか、わからないだろうと思ったからです。イラストはマムマムのぶりんさん(https://www.facebook.com/mammamnon/?pnref=lhc)に描いてもらいました。いつも可愛いイラストで紙面に華を添えてくれています。

子どもとお正月の遊びについて。

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この京こまは木ではなく布でできています。木の芯に布を何重にも巻きつけていくんです。神泉苑の向かいにある雀休さん(雀休 | 京の逸品 老舗モール)の中村さんはいまや京こまを作ることができる最後の職人さんなのです。で、実際にうちの息子たちにコマ回しをやらせてみたのですが、最初はこれがからきしダメで全く回らないんです(笑)。ところがそんな現代っ子でもですよ、回らないとなると回そうと頑張っていくんです。そしてだんだんとコツを掴んで、みるみる上手に回せるようになったんですね。なんというかこういう手先指先の感覚を使ってその力加減を感覚で調節しながら遊びを習得していく、というのは自分の記憶を振り返っても、やはりすごく大事なことなんじゃないかなと思いました。今だとなんでもボタンです。音楽を聴くのも、お茶を入れるのも、遊ぶのも、何から何まで、ボタンを押すくらいしか動作がないんですよね。これだとダメだなあとね、なんとなく感じました。

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凧と羽子板については、船はし屋さん(なつかしい京の駄菓子屋船はし屋)を取材。寺町四条を下がったところにある京都の人ならなんとなく知ってるはずの駄菓子屋さん。ここのご主人がとても面白い方で、絵を描いたり文章を描いたり多彩な方でした。店の中は懐かしいお菓子ばかりで、取材を終えた後は単純にお客としてお菓子をいっぱい買い込んでしまいました。

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というわけで、2017年最初の号はお正月の楽しさを新しく見直してみました。季節のお菓子をいただいたり、子供のことで神社にお参りしたり、床の間に時期時期のお軸をかけたり、花を飾ってみたり。そうした、当たり前のことを当たり前に、毎年毎年繰り返すことの豊かさについて、歳を重ねてみた初めてわかるようになってきたところがあります。そんなことを考えながら一年を始めたいと思います。で、今年は「実行」の年、とします。いままで考えてきたことを実行に移し、来年以降に華を咲かせるための準備になると考えています。いままで以上にいろんな人にお会いする一年になるだろうと思います。会いたいよー、と思ったらできるだけすぐに会いに行くようにします。話したいよー、と思ったらなるべく早くお話しに伺います。よかったら、笑顔で迎えてやってください。そしてよかったら、みなさんからも「会いたいよー」って言ってくれると喜びます。ちぎれるくらいに尻尾を振って会いにいくので、ぜひぜひよろしくお願いします!

大晦日に2016年の仕事をまとめてみました。

今年もあと一時間を切ったということで、今年の仕事の中から主なものをまとめてみました。

京都精華大学岸田繁京都精華大学ポピュラーカルチャー学部客員教員に就任。聴き耳の立て方、教えます」

www.kyoto-seika.ac.jp

3月に東京の某スタジオに行って、くるり岸田繁さんにいろいろとお話を聞くことができました。岸田さんに取材させていただくのはENJOY KYOTO Issue6での取材以来2度目。この仕事は2016年の仕事の中でも自分にとって、もっとも重要でもっとも楽しい仕事になりました。この仕事の告知をtwitterでしたところものすごいリツイートといいね!をいただき、また急激にフオロワーが増えたり、その新しいフォロワーさんとtwitterで交流したりということもありました。

Bluestone パンフレット&ウェブサイト

www.blue-stone.jp

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徳島の藍を使い、京都の職人さんが皮に藍染を施した「SUKUMO Leather」を使った高級スニーカーBluestone。開化堂の八木さんやダンサーの宮原さんへのインタビューをはじめ、ブランディングの重要な位置付けになるパンフレット&ウェブサイトのコピーを担当しました。

富士通テン

富士通テン ドライブレコーダー開発物語 | 富士通テン

富士通テンの開発に携わった技術者へのインタビュー。プロジェクトX的な感じで、できるだけ開発の中で起こったハプニングやエピソードを交えて生の言葉を伝えるよう心がけた仕事でした。

神戸電子専門学校 入学志願者向けパンフレット

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トノサマバッタのCMでおなじみの神戸電子専門学校の入学志願者への案内パンフレット。これまた東京に出張して、活躍するライターの池田園子さんにインタビューしてこれからクリエーターになることの可能性や心構えなどを語ってもらいました。

IYOCA 会員向け冊子

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行ったことのない愛媛の街の人の行動やショッピングスタイルを想像しながらいろいろと紙面企画やアプローチの仕方を提案しながら作りました。わりかし寛容かつフレキシブルに提案を受け入れてくれるクライアントなので、来年は町歩きをして、もっとリアルな提案もできたらなあと思います。

ENJOY KYOTO

1月号 Issue14
「Kyoto Otome Walk」をテーマに祇園東の舞妓さん・富津愈さんを巻頭特集に、英語を話せる舞妓さんとして海外の人に正しく舞妓の文化を伝えたいという彼女の想いなどを聞かせてもらいました。
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そのほかにもちせのトラジャムのしほさんや、かわいい雑貨屋さんSlepinng ForestのMicaさんに取材しました。
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3月号 Issue15
この号ではDeco Japanのページを担当。ファッションデザイナー菅井英子さんに取材して、ニューヨーク留学時代の話や、和と西洋との融合、伝統的な素材とハイテク素材との融合など着物の持つ可能性などについてお話を伺いました。
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また、宝酒造の広告ページでは和久傳さんとのコラボを企画。花見弁当とスパークリング清酒「澪」のペアリングを提案する広告に仕上げました。
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5月号 Issue16
5月号からは隔号で記事については1号まるごとぼくの担当となりました。今号では「Natural Health and Beauty Kyoto Style」をテーマに、森の案内人・三浦豊さん
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re:planterの村瀬貴昭さん、
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BefineのGoさん、
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おぶぶ茶苑の松本さん、
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tea cannnelの藤田さん、
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アド吉カイロプラクティックのアドさん、
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Toscaの橋本明朱花さん・朋果さん
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にお話聞きました。


7月号 Issue17
7月号は広告のみの担当。レギュラーの宝酒造さんの広告では、マドンナやスティングビョークなどのセレブを指導したこともあるヨガティーチャーのダンカンさんとベルギーからやってきて京都に住んでいるサロメさんをモデルに、ジェフ・バーグランドさんの息子さんが営むバーをロケーションに撮影しました。
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また京都府さんのページでは亀岡の商店街をフィーチャー。嵐山からのトロッコ列車と亀岡のTukTukに乗って北町商店街をめぐる旅を提案しました。
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9月号 Issue18
今号ではぼくがすべての記事を担当。京都とスポーツを特集しました。サッカーのサンガ、バスケットのハンナリーズ、女子プロ野球京都フローラを紹介しました。他にも上田滋夢さんのインタビューや、竹内アナウンサーのご尽力により京都のテレビ放送局KBS京都とメディアコラボして海平和アナと南ディレクターに取材しました。この号は「観光とスポーツ」というあまり京都の観光メディアでなかった取り組みとしての新しさもあって特別な思い入れがある号になりました。
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11月号 Issue19
今号では広告ページのみを担当。レギュラーの宝酒造のページでは利き酒会を旅館・八千代さんの協力のもとに実施。国籍や日本在住歴の違いを超えて、それぞれの好みの日本酒を探るいい企画になりました。
また王将さんの広告では餃子が無料でつくクーポンやinstagramに参加する企画を提案。結果は芳しくはなかったのですが、取り組みとしては面白いものになりました。

ENJOY KYOTOでは他にも今年はスポンサーでもある「おたべ」さんのお協力のもと祇園で展覧会を実施もしました。
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ENJOY KYOTOでは他にも今年はスポンサーでもある「おたべ」さんのご協力のもと祇園で展覧会を実施もしました。
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それからサンガの試合には割引クーポンをつけたことで多くの外国人がスタジアムに来てくれるきっかけづくりをすることもできました。
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というわけで2016年が終わります。仕事の面ではかなり充実していた一年ですが、その分ENJOY KYOTOでももっとやれたなあとも思いますし、自分が果たすべき役割をきちんと果たせてないなあとも感じました。
歳末に思ったのはぼくがコピーライター1年生の時に師匠からもらった言葉。それは「作品こそが最高の営業マン」という言葉です。そうしてそんな言葉を思いながら今年のネットメディアの趨勢を見て感じたのは、ネットが浸透して影響力も責任もより大きくなったことで、いわゆる普通のメディアになったこと。それに伴い今まで口先だけで人を欺いたり出し抜くことが影響力と考えてたような勢力やなんちゃってプロデューサーみたいな人種が滅びるだろうということです。そしてそれは長い目で見て、それなりに良いことなのではないかと思っています。

というわけで今年ももうあとわずかですが、来年はフリーになってまる5年を迎える年でもありますので、ちょっとここらで暴れてみようかなと思っています。とおりいっぺんの仕事は、今年以上に全部まとめて断ってやるぞという覚悟を持ってのぞむ所存です。なので、これはという仕事や一緒に楽しもうというプロジェクトの際にこそ、ぜひお声がけくださいませ(笑)。そして皆様も良いお年を!

宝ヶ池球技場へ京都府高校ラグビーの決勝「伏見工・工学院vs京都成章」を観に行ってきました。

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今日は宝ヶ池球技場に高校ラグビー京都府予選決勝を観に行って来ました。ラグビーの試合を生で見るのは本当に久しぶりでした。じつは高校2年生の春に一度だけここで試合をしたことがあります。ぼくは何も考えずにメインスタンドの空いている席に座ったのですが、たまたま伏見工・工学院のOBや選手のご父兄が周りにたくさんいらっしゃる場所だったので、伏見工・工学院の応援目線で試合を観ることにしました。

スタンドでは山口良治先生や大八木淳史さんの姿も見られました。もともとあのスクールウォーズで有名になった伏見工の名前が、再来年には完全になくなること、またOBの平尾誠二さんが今年亡くなったこともあったので、伏見工・工学院を応援しようと思っていたのですが、なんとなくそういう人は多いのかなとも思い、それはそれで京都成章の選手たちには気の毒というか、だからこそ、そういう大人の勝手な判官贔屓みたいのには負けずに、頑張ってほしいなあという思いも同時にあったのですけどね。

驚いたのは野球の応援みたいに部員たちが大声で応援歌というか、サッカーでいうチャントみたいなのをずっと叫んでいることでした。ぼくの時代にはあんなのなかったなあ。まあなんだか高校の体育祭みたいな雰囲気で和やかで楽しくはあるのだけど、ラグビーファンとしては選手の声や身体のぶつかる音もラグビー観戦の醍醐味なので、もう少し静かに見たかったなと思いました。

試合は一進一退の攻防でどちらに転んでもおかしくない、とてもいい試合でしたが、モールやラックなどフォワードの接点のところで京都成章がことごとく優位に立ち、伏見工・工学院はたびたびボールロストをしてしまったことが勝負を分けた印象でした。最終的には20-17で京都成章が勝ちました。伏見工・工学院は後半ロスタイムにワントライを返して最後に意地を見せてくれました。

久しぶりに高校生のラグビーを自分も高校時代にプレイしたことのある宝ヶ池球技場で見て、そして敗れて泣きじゃくる大男たちの姿を見て、素直に感動しました。じつはすでに伏見工としての募集を終えていて1年生は工学院の生徒となり、3年生がチームを去るとここにいる2年生が最後の伏工ラガーメンとなるのだそうです。それだけに強い思いがあったのだろうと思います。スタンドからも「2年生!あと一年あるぞ!来年頑張れよ!」という声がかかってました。

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そして、ラグビーがいいなあと思うのは、最後に相手校の応援席の前に互いの選手が来て挨拶していくところなんです。そしてその挨拶に自分のチーム以上の大きな拍手を互いにするところです。本当にノーサイドなんです。

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かつてユーミンが歌っていました。

なにをゴールに決めて、なにを犠牲にしたの?
誰も知らず。
歓声よりも長く、興奮よりも速く、
走ろうとしていたあなたを少しでも、
わかりたいから。
人々がみんな、あなたを忘れても、ここにいるわ。

www.youtube.com


ぼくも、秋の終わりの夕暮れのラグビー場だけにある美しさを目に焼き付けようと、遠く歓喜の声を上げる京都成章の選手たちと、その手前で涙にくれる伏見工・工学院の選手たちの、時を追うごとに長くなる選手たちの影を、そのふたつの感情のコントラストの残酷さを、いつまでもいつまでも見ていました。そこで、ふと気づいたことがありました。「ああ、オレあんな風に悔しがったこともう何年もないなあ」ということです。

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青春の時代には、そうたとえば恋にしてもそうですし、いろいろと叶わないことがたくさんあります。そして叶わない理由はたいていが理不尽で、努力とかプランニングとかマーケティングとかそういうこととは一切関係なく、ただ相手の女の子が自分を好きではないというただ一点それだけで、それらの夢やすべての努力は無残に敗れ去ります。しかし、大人になるとそういう理不尽な経験はだんだんとなくなっていきます。努力やプランニングやマーケティングによって、人は大きな失敗をしないよう入念に準備し、そして報われるような根回しやら大人の事情やらで、うまう立ち回ろうとします。失敗しても反省会議を開いてあすこがこうダメだったからだという言い訳をします。そして周囲や上司やそして何より自分を納得させるようにします。

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でもそんなのみんなウソだよなあ。伏見工・工学院の選手たちのあの態度が全てだよなあ、と。べつに勝った京都成章がより多くの準備と努力をしたわけでもないと思うんです。伏見工・工学院だってきっと負けないくらいの準備と作戦会議とをやってきたはず。でも勝つのはただ1校だけ。そこにはほとんど理由や根拠と呼べるものなんてない。でもだから悔しいんだと思うのです。だからこそ彼らあんなになって悔しがるんだろうと思うんです。「なんで?」とね。
「なんで?」と問うようなことは、ぼくはもう随分と経験していないような気がします。大人だから、たいていのことはちゃんと準備するし、ダメでもダメな理由がぜんぶキレイに説明できます。「なんで?」などと終わってから問うているようでは初めから準備ができていないんだと納得することもできます。それにそもそも失敗したらすべてを失うような取り組みかたは、むしろできませんしね。

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でも本当はそうじゃないんじゃないかなあ、とね。人目を憚らず泣きじゃくりながら全力で悔しがっている伏見工・工学院の選手たちを見て、ふとそう思いました。いいもの観たなあと。一人でふらっと行ったんですけど、誰かと一緒に行けばよかったと思いました。「ねえ、あれ、すごくよかったよねえ」としみじみ話しながら、ズンズン北山通を歩きたかったなあと。ゲームと秋の夕暮れの球技場の余韻に浸りつつ、そんなことを思いながら歩いていると、気づけば宝ヶ池から北大路まで歩いていました。もうそろそろ京都市内も紅葉の見頃が近づいています。紅葉が終わって、観光客の波が引いたら、冬はもうすぐそこです。

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今年も京都ヒストリカ国際映画祭がおもしろそう。

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いよいよ明日11月2日より、今年で8回目を迎えた京都ヒストリカ国際映画祭が京都文化博物館で開催されます。京都ヒストリカ国際映画祭というのは、世界中の歴史劇・時代物の映画を集めた映画祭で、まあこんなコンセプトでやっている映画祭は世界広しといえどもこの映画祭くらいしかまず見当たらないだろうと思います。そしてそれは、かつて時代劇華やかりしころに「東洋のハリウッド:と呼ばれた京都だからこそ意味のあることなんだと思うんです。

京都ヒストリカ国際映画祭とENJOY KYOTOの関係でいえば、一昨年にかなり深掘りしたインタビューをさせていただき、そうした京都と時代劇と観光の可能性についてのお話を、東映の高橋剣さんや京都ヒストリカ国際映画祭実行委員の衣川くるみさんと一緒にさせていただきました。
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時代劇映画制作のためのワークショップ「フィルムメイカーズ・ラボ」に世界中からクリエイターが集まってきている話や、時代劇とVRなどの先端映像技術の融合とか、いまあらためて読んでみてもENJOY KYOTOで自分がやろうと思っていることや、その後の京都の時代劇をめぐるある種のクローズアップのされかたなんかを先取りした内容になっているんじゃないかなと思っています。よかったら読んでみてください。↓
enjoy-kyoto.net

なかでも特筆すべきはこのインタビューの第10回特別編として、高橋剣さんや衣川くるみさんのご好意で、パトリス・ルコントのインタビューをさせていただいてます。いやあルコントはぼくにとっては青春というか、あのパルコ文化華々しい90年代初頭に「髪結いの亭主」「仕立て屋の恋」などを観て好きな監督さんだったので光栄でした。たぶんいまのところぼくが直接インタビューさせていただいた方の中で、もっとも世界で名前の知られた方であり、もっともVIPな人だったと思います。でもパトリス・ルコント監督はとても気さくな方で、大勢の取り巻きに囲まれたりすることもなければ、取材に関してのNGなどもなく、まゆまろとの記念撮影に応じたり、冗談を言ったり、とにかく和やかでフレンドリーな空気の中で取材は進行しました。
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続いて昨年の京都ヒストリカ国際映画祭では「大河の抱擁」というコロンビアの映画が来ていたのでそれを観に行きました。この作品はちょうどたまたまガルシアマルケスの本を読んでいたこともあって個人的にすごくよかったです。じつはこの作品はこの映画祭での上映後にアメリカのアカデミー賞で外国語映画部門にノミネートされ、次いで「彷徨える河」と改題されて日本でもロードショウ公開されるなど、京都ヒストリカ国際映画祭の先見の明が浮き彫りにした作品だったともいえます。またENJOY KYOTOで紹介したこともあってか「今年は外国人のお客さんが例年よりたくさん来場されています!」と衣川くるみさんからもおっしゃっていただきました。その辺りのことは去年このブログにも書きました。
naoyamatsushima.hatenablog.com


さて、いよいよ今年です。まずこれは記者発表での様子。2年前にインタビューした東映の高橋剣さんによるご挨拶。しかしお名前が「東映のケンさん」にして「剣」ですよ。もう時代劇を扱うことを宿命づけられたとしか思えないですよね。
ナビゲーターはアジア映画にものすごくお詳しい飯星景子さん。さすがに香港やインドの映画の紹介になると、その情報量と熱量が尋常じゃなかったですね。いやはや、さすがの解説でした。
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さて、話題的にはもちろん「The Homesman」が期待大なんです。この作品は、トミー・リー・ジョーンズが主演・監督も務める西部劇。といってもガンマンが活躍するアクション映画ではなく、アメリカ開拓時代を舞台に奇妙な旅を続ける人たちの運命を描いたロードムービー。なんといってもあのトミー・リージョーンズが映画祭に来場して、トークショー形式なのかインタビューなのかはともかく、作品についてみんなの前で語ってくれるということです。文博のシアターってのは結構コンパクトなので、かなり間近でハリウッドスターを見るチャンスです。さすがに今回はインタビューとかできないかなあ。できないよなあ。
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マスコミ的にはトミー・リー・ジョーンズの来場もあって「The Homesman」に話題が集中しがちなのですが、他にも今回けっこう好みな作品が多いんです。例えばこの「Baahubali –The Biginning」
この作品は映画祭のオープニングムービーとなっているインド映画。インド映画というといわゆる歌って踊ってというイメージがありますが、この作品はとても重厚で骨太な歴史大河作品。出生の秘密を知るために自分が赤ん坊の頃に拾われたという滝の上に行くと、そこで一人の女性兵士と恋をする。戦争中だった彼女の王国に兵士として助太刀するが、その敵国で自身の出生に関わる大きな秘密を知るという、まるで神話のような物語。超大作にふさわしいスペクタクルな映像が圧巻。
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「バタリオン」。
ロシアの映画で第一次世界大戦に結成された女性部隊を描いた物語。降着が続く前線で戦意を失い式の下がった男性兵士に対し、この「婦人決死隊」と名付けられた女性部隊の勇敢な振る舞いとその先に待つ過酷な運命を描いた作品。ヨーロッパらしい色調が美しい。
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「ウルスリのスズ」
アルプスの山奥で暮らす少年・ウルスリの冒険とその家族や友人との日常を描いた作品で、スイスでは名作絵本と言われる作品の映画化。ベルギーの「ブルーベリーヒル」とか、フランスの「みつばちのささやき」「マルセルのお城」といったあたりのヨーロッパの良質な少年映画の流れの作品かな。久しくこのタイプの映画を見ていなかったので楽しみです。
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「秘密が見える少女」
デンマークノルウェイチェコの合作映画。相手の目を見るとその人が恥だと思っていることが見えるという特殊能力を持ってしまった少女の物語。個人的にはもしかしたら案外これが一番いいんじゃないかと期待している作品。
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他にも今回は「ニンジャ映画進化論」と題して、1921年に尾上松之助主演で製作され、今回活動弁士付き上映の「豪傑児雷也」から、お色気たっぷり「くノ一忍法」、アニメ作品の「THE LAST NARUTO THE MOVIE」に「ミュータント・タートルズ」にいたるまで、あらゆるタイプのニンジャ映画を集めた上映も見どころ。これはねえ、全作通しで時系列で見たいなあというラインナップです。個人的には弁士つき上映の「「豪傑児雷也」と中島貞夫監督のデビュー作「くノ一忍法」が見たいかな。
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それに今回は歴史劇だけを扱うはずの京都ヒストリカ映画祭で初めて「わたしが棄てたナポレオン」「古都」というふたつの現代劇作品が上映されます。これは先にも触れた「フィルムメイカーズラボ」出身の監督が制作した作品で、いわば「凱旋上映」とでもいうことになるでしょうか。「カムバックサーモンプロジェクト」と名付けられております(笑)。

「わたしが棄てたナポレオン」はジョルジア・ファリーナ監督の作品でイタリア映画。イタリア映画というとビスコンティとかフェリーニとかパゾリーにとか重厚な芸術作品をイメージしがちだけど、ぼくはそうした作品も好きだけどイタリアのエンタメ映画はけっこう好きなんです。イタリアのエンタメ映画って「イタリア的恋愛マニュアル」とか「昼下がり、ローマの恋」とか、とにかく笑いあり涙あり、人生を謳歌しながらどこかうまくいかなくて、でも兄弟とか友人とか家族がいつも助けてくれてみたいな、人情モノというか日本のドラマやエンタメ映画に感覚が近いと思うんです。この作品もトレイラーを見てる限りテンポ良くて楽しめそうですね。
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「古都」は京都を舞台にした川端康成の小説を現代に翻案した作品。川端の小説はすごく好きな作品だったので、これを現代版にどう描くのかってのは、わりと楽しみです。監督はYuki Saito。出演は松雪泰子さん、成海璃子さん、橋本愛さん、奥田瑛二さんなどです。
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またこの映画祭の楽しいところは、映画上映後にその作品の監督や出演者など関係者によるトークショーがセットで行われること。今回もトミー・リー・ジョーンズだけでなく、昨年ぼくもENJOY KYOTOで取材(参照→
時代劇にまつわる随想 - ゴジマエ~後日読み返してもらいたいささやかなまえがき~
)させていただいた斬られ役でお馴染みの福本清三さんと殺陣師の菅原俊夫さんなどもゲストで登場されるそうです。

どの国にも歴史はあり、そして、どの国にも映画がある。先のインタビューでも話していたことなのですが、歴史映画を集めた国際映画祭というのは、ある意味では互いの国の歴史・文化・伝統を「楽しく」理解し合い、そしてリスペクトしあうのに、すごくいい機会なのではないかなとぼくは思います。歴史を語り合うとややこしい部分があったり、堅苦しい話になったりもしがちですが、歴史映画ならもっと肩肘張らずに気軽に語り合えると思うし、そこから互いをわかりあうことの第一歩になるんじゃないか。そんな試みにもこの映画祭はなるような、そんな気がしています。


京都ヒストリカ国際映画祭
●期間:2016年11月2日(水)〜11月13日(日)
●場所:京都文化博物館
www.historica-kyoto.com

はたして外国人の方はENJOY KYOTOを持ってサンガの試合を見に来てくれたのか?

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いよいよ運命の10月30日。今日は以前にも書いていたとおり、ENJOY KYOTOを西京極スタジアムに持って来た外国人の方限定で、京都サンガF.C.の試合を500円で観られる日。来てくれるかなあ?ゼロだったらどうしよう?まさか一人も来ないなんってことはないだろう、とかいろいろソワソワしながら西京極スタジアムへ行って来ました。
天気も朝から爽やかな秋晴れで、昼間はあったかかったこともあってか、お客さんはいっぱい。ジャージを着込んだサポーターだけでなく、家族連れやカップルの姿も多く見られました。あと岡山のサポーターがけっこう多く感じましたね。とりあえずゲートをくぐると「ENJOY FOOTBALL」なんて書いたノボリもあって、偶然ではあるんだけどなんだか縁起がいい気がして、ズンズン早足でスタジアム入場口のほうへと向かいます。

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進んでいくとチケットセンターや屋台などがひしめくゾーンが見えて来ます。オランダやトルコの屋台もあってなんとなくフードも国際色豊か。「ENJOY KYOTO屋台デー」とか仕掛けて、各国料理の屋台を集めるなんてのもいいかもなあ。

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続いて見えて来たのがサンガのチームバス。熱狂的なサポーターはここで選手たちの会場入りを待ち受け、バスを降りた選手に対し大きな声援で出迎えたり、スタジアムを後にする選手を見送ったりするのだそうです。

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それからこの日はハロウィンということもあってキャンディープレゼントとかフェイスペインティングなど、キッズ向けのイベントなんかもやってました。今回ENJOY KYOTOで外国人観光客とスポーツを組み合わせる動機のひとつとして京都は子どもと大人がワーッと遊べる観光地が少ないというのがあったのですが、そういう意味ではこうした家族レジャーとしてのスポーツ観戦というのもいいと思いますよね。

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いよいよスタジアムの中へ。まず最初は正面スタンドの自由席へ。ちらほらと外国人のグループを見かけたのでカタコトの英語でインタビュー開始。最初のグループは留学生だそうで、いちばん手前のメガネの男性は一年前にシカゴから京都に来たらしく、サッカーの試合は初めて観に来たということでした。なんでも彼は野球が大好きだそうで、カブスのファンだと。ちょうどワールドシリーズを戦っている最中だけど日本では観られないから、昨夜は日本シリーズを観ていたと言ってました。「カワサキはどうか?」と聞くと「ああ、彼は大好きだよ」と笑っていました。来週は「京都ハンナリーズの試合を見にいくんだ」とENJOY KYOTOのハンナリーズのページを見ながら教えてくれました。

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次に声をかけたのはフィンランドからのツーリスト。女性のほうはすでに5回目の日本旅行ということもあって日本語が少し話せたので、ちょっと日本語でも会話しました。2人はたぶんだけど恋人だと思うけど、ぼくの英語がうまく伝わらなくて自信はない。日本語で「トモダチではない」と言ってたので、たぶんそうなんだろう。まあいいや。ともかく彼女たちは1ヶ月近く日本にいるらしいので、明後日から配布が始まるENJOY KYOTOの最新号も、またどこかで手に取ってくれるといいなと思いました。

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もう一人もフィンランドから来た女性で、彼女は宇治の抹茶の会社で働いていると言っていました。会社の名前を教えてくれたのだけど、北欧訛りの英語で発語された日本語の企業名というのはなかなかに難易度が高くて、全く聞き取れなかったです。「モロゾフ」みたいに聞こえたけどどこなんだろう?「I don’t know it」というと彼女は「抹茶の会社は宇治にはたくさんあるからね」みたいなことを言って笑っていました。とリあえず彼女とは英語でやりとりしたのですが、たった一人で来ていたので「キミはサッカーが好きなの?」と尋ねると「フィンランドではアイスホッケーが好き」と目を輝かせて答えてくれたので、たぶんスポーツが好きなんだろうと思いました。たぶんね。

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彼女たちはたまたまスタンドで出会った人たちで、ENJOY KYOTOを持って来たというわけではないのですが、みんなの様子を見ているとやっぱり周囲のサポーターの真似をして、一緒にチャントを叫んだり(もちろん日本語で)、手を叩いたり、手を前に伸ばしてエールを送ったりしていました。それはじつに楽しそうで、言葉の通じない異国のロックコンサートでファンの挙動を真似しながら頑張って溶け込み、一緒にこの雰囲気を楽しもうという気持ちがひしひしと伝わってきました。そしてそれは、観ていてとてもすがすがしい光景でした。やっぱりスポーツには言語や文化を超えて通じ合うものがあるんだなあと感じたし、今回のスポーツ特集号はやってよかったなあと、間違ってなかったんだと確信できました。

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さて、とりあえず役目を果たしたので、後半からは特別にご用意いただいたスペシャルに良い席に移動。中央の最前列で観戦しました。西京極はもともとサッカー専用スタジアムではないため、ピッチと客席が遠いのですが、それでもやはりここまで降りてくると臨場感ありますね。戦況はもっと上の席から見たほうがわかりやすいですし、個人的にはそのあたりの席のほうが好きなのですが、それでもたまにはこういう臨場感ある席もいいですね。

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肝心の試合は前半早々にENJOY KYOTOでインタビューしたエスクデロ選手のヘディングゴールで先制。さらに後半から入った矢島選手が得点し、2-0で昇格争いを展開しているファジアーノ岡山に見事勝ちました。同じくENJOY KYOTOで取材した髙橋祐治選手も先発フル出場を果たし、岡山の攻撃を見事に失点ゼロにおさえてくれました。これで岡山と勝ち点で並んだわけですからこの勝利は大きいです。それにせっかくのENJOY KYOTOデーだったわけですから、スタジアムに足を運んでくれた外国人のみんなに、攻撃的なサッカーで勝利する強い京都サンガF.C.の勇姿を見せることができてホントよかったなあと思いました。

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というわけで結果発表です。今日ではなく16日のゲームに間違って来てしまったお客さんも含めて、最終的には総勢20組30名ほどの外国人ツーリストの方々がENJOY KYOTOを持ってスタジアムへ足を運んでくれたようです(サンガさんには16日に間違えて来た人にも500円での入場を認めるという寛大な対応をしていただいたのだそうです。ありがとうございます)。いやあ、これだけ限られた対象範囲と告知規模にしてはまずまず成功だったと言っていいのではないかなと個人的には思っています。告知媒体はENJOY KYOTOのみですし、それだって割引告知を見逃す人もいるでしょうし。広報の方にも試合後にご挨拶させていただいたときに、「ぜひまたもっとしっかりと時間とって、いろいろやりたいです!」と言っていただけたので、今後もまた何かこうした、紙面とリアルをつなぐ企画を仕掛けていきたいと思っています。興味ある方は、ぜひともプロフ欄のgmailまでご連絡ください。

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10月30日はENJOY KYOTOを持って西京極スタジアムへサンガを応援しに行こう。

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ENJOY KYOTO Issue18はスポーツ特集号でした。といっても、この号の配布は9月1日から10月31日までとなっていて、そろそろ次号の配布が始まる頃なのですが、じゃあなんでいまごろになってこのエントリーを書くのかというと、じつは今回「外国人のお客様に限り」、ENJOY KYOTOIssue18を持って来れば京都サンガF.C.の試合を500円で観戦できる、という特別企画を試みているからなのです。
で、その試合がいよいよ明後日30日に迫っているので、もしたまたまこれを見た日本語がわかる在住外国人の方や、そのご友人、あるいはいま観光で京都に来ている外国人ツーリストを知っているよ、という人にぜひとも読んでもらえたらなと思って、それでまあ書きました。1冊で4人まで500円になります。
ものは試しにと、こないだ近所にあるゲストハウスに飛び込みで3軒くらい回ってみたらかなりウェルカムで好印象でした。しかもそのうちの一軒のオーナーからは「じつは先日ニュージーランドのお客様からラグビーを観れる場所はないかと聞かれました。そういうニーズってあるんですね」という話を聞き、ああやっぱり自分は間違ってなかったなと感じたんです。
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サンガの広報の方にこないだお会いした時にも、じつはすでに日にちを間違えてENJOY KYOTOを持って来場されている外国からのお客さんがちらほらいらっしゃるという話をお聞きしました。ちょっと入稿前に色々ありまして、結果的に「割引対象試合」の表記が小さくなってしまって混乱をきたしたことは反省点ですが、それでもサンガの方もせっかくだからと割引で入場していただく対応をしていただいているようで、とにかくちゃんとリアクションがあったことがとても嬉しいです。前にも書きましたが、物書きとして一番嬉しいのは、何かの賞を取るとか何千リツイートとかされてバズることなんかよりも、記事を見た人が実際にその場所へ行ったり、商品を買ったり、具体的なアクションにつながったことだからです。


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というわけで、30日の試合はぜひ外国人ツーリストはもちろん京都在住の外国人の方々も含めた、多国籍な応援を西京極スタジアムで繰り広げて、京都サンガF.C.の勝利を後押ししてほしいし、そういう風景が当日見られるといいなあと思うのです。たぶんそんな取り組みをしてるクラブはまだないと思うんです。そして紙面にはチャントもいくつか載っけています。じつは取材中にスタジアムで外国人観光客のグループが、見よう見まねでサポーターたちと一緒にチャントをしたり手を振り上げたりして、まるでライブを楽しむみたいに一緒に応援するの光景をたまたま見かけて、ああチャント一例とかあったらいいよなと思ったんです。30日はスタジアムのあちらこちらでこうなるといいなあ、という思いを込めて。


そもそも今回スポーツと観光をテーマに特集をしたのは、スポーツと観光の組み合わせというのはこれまであまりなかったと気づいたから。もともとスポーツ・ツーリズムなる考え方はあったのですが、それより先にまずそもそも京都には知的好奇心を刺激する観光地や文化体験をする場所はたくさんあっても、子どもや家族連れが「わーっ」と我を忘れて遊べる観光スポットが少ないので、ならばスポーツ観戦はいいんじゃないかと考えたのがキッカケでした。
それとかつて自分がローマに旅行に行った時にサッカーのラツィオ戦をスタディオ・オリンピコで観て、それまであまり興味のなかったラツィオの戦績が帰国後も気になるようになった、という個人的体験もありました。

今回取材をしていろんな人に話を聞いてみて、スポーツと観光の相性の良さをすごく感じました。サッカーでも、メジャーリーグでも、その街の個性がスタジアムの設計や選手の育成方法、チームカラーなんかに出ますよね?日本でも地域ごとに背景が異なり、子どもたちの育成から地域交流、スポーツ文化にいたるまで、スポーツは地域の特色が強く出るものなんだなあとあらためて感じました。それにスタジアムではその街に住んでいる人の「素」の姿も見れますしね。


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京都サンガF.C.の取材では城陽市のサンガタウンにお邪魔して、練習後にエスクデロ選手と高橋祐治選手に話を伺いました。スペイン生まれで日本育ち、アルゼンチンでの生活も経験して、いまは日本国籍を取得したエスクデロ選手は「アルゼンチンでは生まれた瞬間に自分の応援するクラブチームが決まるんだ。それが2部リーグだろうが5部リーグだろうが関係ない。一生そのクラブをサポートする。そして大人になって自己紹介の時には必ず自分の名前と、応援するクラブの名前をまず明かすんだ」とか言うんです。ああ、それすごくいいなあ!と思うんですよね。こういうエピソードってなかなか聞けないし、そういう地元サポーターの強い思いがクラブを育てるんだなあともあらためて感じました。そしていまみたいな時こそ、彼のようなタフな選手が日本代表にいてほしいなあと思うんです。
このときのインタビューの様子をサンガのYouTubeチャンネルで一部公開していただいてます。ウンウン相槌打ってるのが僕ですね(笑)。
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いっぽうの髙橋祐治選手からは地元出身でジュニアからの生え抜き選手ならではのサンガ愛を感じました。彼が子供の頃に憧れていたサンガは天皇杯で優勝していた強豪チームだったので、こんな位置にいるチームではないし、必ずこのチームでJ1に昇格したいと決意を語ってくれました。重い怪我から復帰したばかりの髙橋選手の活躍が昇格争いの鍵を握っていると思います。
www.youtube.com

そして広報の方から「Purple with purpose」というフレーズをすごく気に入ってもらいました。「紫(=サンガである理由)というぼくが書いたキャッチコピーを翻訳チームが英語のフレーズにしてくれたのでした。チームの出発点であるパープルサンガとしての原点をあらためて見つめ直すきっかけになったと言っていただきました。



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京都ハンナリーズの取材ではちょうどシーズンオフであったため選手の取材がギリギリまでできなかったこと、また9月から新たに「Bリーグ」として開幕することで準備に大忙しだったこともあり、じっくりと取材する時間はあまりありませんでした。しかしそんな中でもアメリカ出身で長身のケヴィン・コッツァー選手にお話を伺うことができました(本当に大きかった!)。
またこんな取り組みを教えてくれました。外国人選手と日本人選手を混成した3人ずつのチームに別れて京都市内の観光名所に出かけて行き、互いに英語や日本語で会話をしながら食事をしたり写真を撮ったり散歩する時間を作るのだそうです。これには試合や練習だけでなく普段からのコミュニケーションを密にする狙いがあるそうで、その成果か取材時には皆さん本当に仲がよさそうでとてもいい雰囲気でした。


また広報の方が「熱狂的なブースターはアウェイでもツアーを組んで全試合応援しにいく人もいます。もちろん応援がメインだけど、その土地その土地の名物を食べたり地酒を飲んだり、観光も兼ねて転戦するんですよ」と教えてくれました。こういう話からもやっぱり、スポーツと観光って結びつきやすいんだなと思いましたね。



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京都フローラは世界で唯一の女子プロ野球リーグとしての誇りを持っていらっしゃいました。しかもチームだけでなく、女子プロ野球リーグ機構が四条烏丸にあるんです。これ、けっこう知られてないんじゃないかな。
ぼくはわかさスタジアムにも、それから個人的にオススメな伏見桃山球場にも応援に行ったのですが、映画「プリティリーグ」の切なくも懸命に戦う女子選手の姿と重なって見えました。記事にはこう書いたんです。

ここにはマドンナもジーナ・デイビストム・ハンクスもいない。ベーブ・ルースハンク・アーロンケン・グリフィ-Jrもイチローもだ。しかし、スタジアムで白球を追いかける彼女たちの姿は、ハリウッド映画の名だたるスターにも、あるいは男子の英雄的名選手たちにも決して見劣りすることのない情熱と勇気と美しさがある。そしてもうひとつ。そこではベースボールスタジアムでしか味わえない懐かしくも優しい気持ちに出会えるだろう。ホットドッグとビール。青々とした芝生と黒い土のコントラスト。秋の気配を漂わせ始めた風の香り。そして球場に響き渡るボールを叩くバットの音。野球ファンでなくても、秋のスタジアムにはなにか特別な郷愁を感じさせるものがある。だから、完成されたスポーツエンターテインメントを楽しむというよりは、地域のクラブチームがより高いステージに向かって試合に励むのを、近所の人たちみんなで応援するような感覚が近いのかもしれない。京都フローラは、ぜひともそんな気持ちで応援してほしいチームなのだ

ちょっと気持ちが入りすぎてるキライはあるけど、とにかくぼくにはそう感じたし、紹介した3つの中で世界的に見ればじつは野球がもっともローカルなスポーツなので、プレイそのものや技術論なんかよりも、とにかくスタジアムに行ってみたいと思ってもらうのが先決だなと感じたのでした。



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それから上田滋夢さんには社会学者としてみたスポーツ・ツーリズムの話を伺いました。たとえばとくに印象に残ったのは、スポーツツーリズムなんていう話をする前に、そもそも少年少女のスポーツ合宿地として考えた場合に、午前中で練習が終わった後、午後から社会見学として市内の寺社仏閣や史跡を巡ることができるので、教育的な面から見ても「京都とスポーツと観光」はとっても相性がいいんだ、っていう話でした。これはなるほどと思いましたね。ぼくは高校時代ラグビー部の合宿で菅平とかに行きましたけど、練習する以外に何にもない環境でしたから。これは目から鱗な視点でした。



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最後にKBS京都とメディアコラボした取材ではアナウンサーの海平和さんとテレビ制作局長の南哲夫さんにインタビュー。ぼくは京スポの視聴者でもあったのでスタジオで海平さんにお会いしたときはちょっと感動でした。
その海平さんは京都マラソンを取り上げ「街を走ってみてこれまでになかった視点を得られた」といい、「マラソンを走ることで街のストーリーを感じることができた」と語っていただきました。あと学生スポーツや地域スポーツの身近な話題を取り上げ、地元のスポーツ選手をいち早く紹介することで、その後で選手がオリンピックやプロの世界で活躍するスター選手になったときに、地元で見てくれていた方々が「ああ、あんときのあの子がこんなに偉くなって」と、おらが街の代表として応援し続けられることを地域メディアのひとつの役割としてあげておられました。


ともあれ、今回のスポーツ特集号はとにかく自分にとっても学びの多い、印象深い一冊になりました。そして「Join Our Home Team」という表紙のキャッチコピーに込めた思い。それは、世界中に京都のスポーツチームのファンができると嬉しいし、スポーツ観戦や同じチームを応援することを通じて、世界中の人たちと「チームKYOTO」になれたら、ということでした。30日の西京極スタジアムのスタンドに、いろんな国籍の人が集まってくれてるといいんだけどなあ。

「ENJOY KYOTO バックナンバー展」のお知らせ

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「ENJOY KYOTO バックナンバー展」
●会期:10月25日(火)〜11月25日(金)
●場所:祇園花見小路 洋菓子「洋菓子ぎをんさかい gion sakai」 1階奥のギャラリー
●時間:11:00〜19:00
●入場無料

ENJOY KYOTOは、この11月で創刊からまる3年、いよいよ4年目を迎えることになりました。「インバウンド」という言葉がまだ巷ではあまり知られていなかったころに始まったぼくらの活動も、志を同じくする友人たちとの出会いや、サポートしてくださる先輩方の尽力によって、少しずつ、それでいて確かな歩みを進めることができました。


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そこで、いつもお世話になっている祇園花見小路の洋菓子店・カフェ「ぎをんさかい」さんにご協力いただき、お店奥にあるギャラリーにて、ささやかではありますが「ENJOY KYOTO バックナンバー展」を開催させていただくことになりました。これまでのENJOY KYOTO Issue18までの中から、特にトラディショナルなテーマを扱った号の表紙を集めて展示させていただいております。


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同時に部数は少ないのですが、表紙を展示していない号も含めた過去のバックナンバーを設置しています。あらためてこの機会に、手にとっていただければと思います。考えてみれば創刊号は竹中健司さんとカンバラクニエさんのコラボ「いまうきよえ」を表紙に竹笹堂を特集。以後、「楽京」と言う漢字ロゴを描いていただいた書家の川尾朋子さん、京提灯の小嶋商店、ジェフ・バーグランドさん、ポールとクリスが京都で始めたクラフトビールブランド京都醸造京都サンガF.C.京都ハンナリーズまで非常に多様な方々を取材してきました。お忙しい中、くるりの岸田さん、佐藤さん、ファンファンさん、それからつじあやのさんにも取材させていただきました。


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そんなことを思い返しながら設営をやっているあいだ、こうやって表紙を眺めているうち、京都のコンテンツの量はもちろん、バラエティの豊かさ、奥行きの深さを、あらためて感じていました。そして、まだまだ足りていないなあと自分の至らなさを思いつつ、だからこそ京都という街の時間の大きさ、スケールの大きさを思い知るのでした。


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空間的には狭くてコンパクトな街ですが、積み重ねてきた時間という軸のほうに、ものすごく豊かな財産が蓄えられているし、それは遺産ではなくその資産を生かしていまの京都の文化を生み出せる土壌を育んでいると思います。だから、海外の人たちに紹介したい人は、まだまだいます。そして、やりたいことは、ぜんぜんできていません。でも、これはぼくの口癖ですが、やるべき課題があるというのは、きっと良いことなんだと思うのです。


と、いうわけで。「バックナンバー展」と銘打ってはいますが、これは決して「回顧展」ではありません。展示の「展」は展望の「展」でもあるのです。だから、これまで以上の、これからを。過去を振り返るのではなく、ぼくたち自身もこの展示を通じて、前を向くためのヒントを見つけたいと思っています。在廊の予定はありませんが、近くへお越しの際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。